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スリーピースだより

2025/11/28

「その場しのぎの嘘」がやめられないのは虚言癖やADHDのせい?嘘の裏に隠れた原因と改善へのステップ

仕事においてその場しのぎの嘘を繰り返してしまうことは、単なる性格の問題や不誠実さによるものとは限りません。
自分でも「なぜこんな嘘をついてしまったのか」と自責の念に駆られながらも、気づくと口をついて出てしまう。こうした背景には、ADHD(注意欠如・多動症)をはじめとする発達障害の特性や、心理学的な防衛本能が深く関わっているケースが少なくありません。
本記事では、その場しのぎの嘘がやめられない医学的・心理的な原因を掘り下げるとともに、社会生活や就労におけるリスク、そして現状を改善して自分らしく働くための具体的なステップを専門的な視点から解説します。

その場しのぎの嘘がやめられないのは

その場しのぎの嘘に隠された心理と脳の特性

その場しのぎの嘘とは、直面している不都合な状況や追及を回避するために、咄嗟に事実とは異なる説明をしてしまう行為を指します。心理学的には、これを自己防衛の一種と捉えることができます。他者からの叱責や評価の低下を極度に恐れるあまり、脳が「危機を回避せよ」という信号を優先的に送り出し、理性が働く前に言葉が先に出てしまうのです。

この現象を脳科学的な観点から見ると、脳の実行機能の不全が関係していることがわかります。実行機能とは、行動を計画し、不適切な反応を抑制し、目的に向かって認知を制御する機能のことです。この機能が弱まると、長期的な信用よりも今この瞬間の苦痛からの解放を優先してしまう衝動性が抑えられなくなります。
また、一度嘘をつくと、その矛盾を埋めるためにさらなる嘘を重ねるという、いわゆる虚言癖のような状態に陥ることもありますが、これも本人の悪意ではなく、脳の混乱と不安の連鎖から生じている場合が多いのです。

ADHD(注意欠如・多動症)と衝動的な嘘の因果関係

その場しのぎの嘘と最も関連が深いと言われる発達障害の一つが、ADHDです。ADHDの特性である衝動性と不注意は、意図しない嘘を誘発する大きな要因となります。
例えば、指示を忘れてしまった際(不注意)に、上司から進捗を問われ、咄嗟に「終わっています」と答えてしまう(衝動性)といったケースです。

ADHDを持つ方の場合、脳内のワーキングメモリ(一時的な情報の保持・処理能力)の容量に制限があることが多く、複数の情報を整理しながら論理的に説明することが困難な場合があります。そのため、混乱した状況で問い詰められると、脳がオーバーフローを起こし、最も手近な拒絶を回避する言葉として嘘を選択してしまうのです。これは、他人を欺こうとする悪意の嘘ではなく、脳の特性に由来する反射的な適応反応に近いものと言えます。こうした特性を理解せず、単なる努力不足や性格の不一致として片付けてしまうと、本人の自尊心は著しく低下し、二次障害としてのうつ病や適応障害を招くリスクもあります。

虚言癖や適応障害が社会生活に及ぼす影響

慢性的に嘘を繰り返してしまう状態が続くと、臨床的には虚言癖(空想虚言症)や、過度なストレスによる適応障害の症状として現れることがあります。適応障害においては、現在の環境(職場や人間関係)に適応できず、過剰なストレスから身を守るために事実を歪めて伝えてしまうことが常態化します。

職場において、このその場しのぎの嘘がもたらす影響は甚大です。最初は小さな嘘であっても、積み重なることで報・連・相(報告・連絡・相談)の仕組みが破綻し、チーム全体のプロジェクトに遅滞やミスを招きます。周囲からの信頼を失うだけでなく、本人も常に「いつ嘘が露呈するか」という恐怖に怯えながら働くことになり、メンタルヘルスは急速に悪化します。このような状況は、単に本人の意思の強さだけで解決できるものではなく、適切な医学的診断や、環境調整を伴う専門的なアプローチが必要な段階であると言えるでしょう。

自己理解を深めるための、認知の歪みへのアプローチ

嘘を減らし、安定した社会生活を送るための第一歩は、自分自身の認知の歪みを客観的に把握することです。多くの場合、その場しのぎの嘘をつく人の根底には完璧主義や過度な承認欲求、あるいは極端な自己卑下が潜んでいます。ありのままの自分では受け入れられないミスをしたら終わりだという極端な思考(白黒思考)が、嘘という防壁を作らせてしまうのです。

改善へのステップとして有効なのが、認知行動療法(CBT)の考え方を取り入れることです。嘘をついてしまった瞬間の状況を記録し、その時、どのような感情が動いたか。どのような思考(自動思考)が浮かんだかを分析します。
例えば、「怒られるのが怖い」という感情に対し、ミスを正直に伝えて謝罪した際の最悪のシナリオと、現実的な解決策を事前にシミュレーションする訓練を行います。失敗を報告することは一時的な痛みであっても、長期的な信頼関係の構築には不可欠であることを、理論と経験の両面から脳に再学習させていくプロセスが重要です。

生活習慣の改善と環境調整による衝動性のコントロール

特性からくる嘘を抑えるためには、精神論だけでなく、物理的な環境整備と生活習慣の見直しが極めて効果的です。ADHDの傾向がある場合、脳のコンディションを整えることが衝動性の抑制に直結します。十分な睡眠、バランスの取れた食事、そして必要に応じた適切な投薬治療は、脳の実行機能をサポートし、落ち着いた判断を助けます。

また、職場の環境調整も欠かせません。例えば、口頭での急な確認が嘘を誘発するのであれば、確認事項はすべてチャットやメールなどのテキストベースで行うよう周囲に協力を求める、あるいは進捗確認シートを共有し、嘘をつく余地のない仕組みを構築するといった方法があります。自分の特性を隠そうとするのではなく、特定の状況下で判断が狂いやすいことを自覚し、その弱点をシステムで補完するという考え方にシフトすることが、就労継続の鍵となります。

就労移行支援事業所で取り組む、誠実なキャリアへの再出発

自力での改善に限界を感じている場合、就労移行支援事業所のような専門機関を活用することは、非常に有効な選択肢です。こうした場所では、単なる就職スキルの習得だけでなく、自分の特性(強み・弱み)を深く理解するための自己分析プログラムや、対人関係を円滑にするためのソーシャルスキルトレーニング(SST)が提供されています。

就労移行支援事業所では、擬似的な職場環境の中でミスを正直に報告する練習を積み重ねることができます。失敗しても否定されない安全な環境で、正直に伝えることのメリット(早期解決、精神的安寧)を繰り返し体感することで、染み付いた嘘のパターンを書き換えていくことが可能です。また、専門スタッフが本人と企業の間に入り、どのような配慮があれば嘘をつかずにパフォーマンスを発揮できるかを共に考え、適切な環境での就職をサポートします。
病気かもしれないという不安を抱えたまま一人で悩み続けるのではなく、自身の特性を管理可能な個性へと変えていくためのステップとして、こうした支援体制を積極的に検討してみてください。

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