「手帳がなくても利用できる就労移行支援とは|対象者・必要書類・注意点まとめ
「就労移行支援を利用したいけれど、障害者手帳を持っていない」「手帳がないと利用できないのでは?」——こうした疑問を持つ方は少なくありません。
実際のところ、就労移行支援は手帳がなくても利用できる可能性があります。 重要なのは、「支援の必要性がある」と自治体に認められるかどうかです。
本記事では、就労移行支援の制度の仕組み、利用条件、必要書類、注意点までを専門的かつわかりやすく解説します。これから利用を検討している方や、手帳を取得していない方にとって役立つ情報を整理しました。

就労移行支援とは何か:一般就労への架け橋となる制度
目次
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく福祉サービスの一つで、一般企業への就職を目指す人を支援するための制度です。
心身の不調や障害などが原因で働くことに困難を感じている方に対し、職業訓練や就職支援、生活リズムの安定化、職場定着支援などを行います。
支援の目的は、「働けるようにする」ことではなく、**「その人が自分のペースで長く働き続けられるように支援する」**ことです。
就労移行支援の特徴は、医療・福祉・雇用の分野を横断しながら、一人ひとりの状態に合わせた就労準備ができる点にあります。利用期間は原則2年間で、必要に応じて延長も可能です。
手帳がなくても利用できる理由と根拠
「障害者手帳がないと利用できない」という誤解は非常に多いですが、制度上、手帳の有無は必須条件ではありません。
就労移行支援の利用対象は、以下のように定められています。
「就労が可能であるにもかかわらず、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者その他これに準ずる者」(障害者総合支援法 第5条第11項)
つまり、障害者手帳を持っていない場合でも、医師の診断や意見書などで「支援の必要性」が認められれば、「これに準ずる者」として利用できるのです。
特に、次のようなケースでは手帳なしでも利用が認められることがあります。
- 精神科・心療内科での通院歴がある
- 発達障害や適応障害などの診断を受けている
- 医師が就労支援の必要性を記載した診断書を発行している
- 学校や医療機関からの推薦がある
手帳の取得前や診断後間もない段階でも、支援を受けながら就職準備を進めることができます。
手帳なしで利用するために必要な書類と手続きの流れ
手帳がなくても就労移行支援を利用する場合、自治体による「障害福祉サービス受給者証」の交付が必要です。そのための一般的な手続きの流れは以下の通りです。
- 医師に相談・診断書を準備する
まずは主治医に「就労移行支援を利用したい」と相談し、診断書または意見書を発行してもらいます。就労や生活面の困難さ、支援の必要性が具体的に書かれているとスムーズです。 - 自治体の障がい福祉課に申請する
診断書などを持参して、自治体(市区町村)の障がい福祉課で利用申請を行います。この際、面談や現状確認が行われます。 - 相談支援専門員との面談
必要に応じて、相談支援専門員が「サービス等利用計画案」を作成します。これは、どのような支援をどの期間受けるかをまとめた計画書です。 - 受給者証の発行
審査の結果、「就労移行支援の利用が適切」と判断されれば、「障害福祉サービス受給者証」が発行されます。 - 契約・利用開始
利用を希望する支援機関と契約を結び、個別支援計画をもとに通所がスタートします。
このプロセス全体で、1〜2か月程度かかることが一般的です。申請準備から始める場合は、早めの行動が安心です。
手帳なしで利用する際の注意点とデメリット
手帳を持たずに就労移行支援を利用する場合、いくつかの注意点もあります。
- 障害者雇用枠には応募できない
手帳を持たない場合、法定雇用率にカウントされないため、一般雇用枠での就職活動が中心となります。 - 公的優遇制度の対象外になる場合がある
交通費補助や税制優遇など、障害者手帳を前提とした制度が一部使えません。 - 自治体によって判断基準が異なる
手帳がない場合の認定は自治体の裁量に委ねられるため、地域によって審査基準や対応が異なります。 - 企業との情報共有に配慮が必要
障害を開示せずに一般枠で就職する場合、職場での配慮が得にくいことがあります。医師や支援スタッフと相談しながら、開示・非開示のバランスを検討しましょう。
とはいえ、手帳を取得していなくても、支援内容や訓練プログラム自体に違いはほとんどありません。むしろ、「働く力を整える場」として活用しながら、必要に応じて将来的に手帳取得を検討することも可能です。
手帳を持たずに就労移行支援を利用するメリット
手帳を持たないまま利用することには、次のようなメリットもあります。
- 支援を受けながら自分の状態を整理できる
まずは診断直後や治療中でも通所しながら、自分の体調・特性・働き方の方向性を把握できます。 - 手帳取得前のステップとして活用できる
通所実績や支援記録が、将来的な手帳申請の際の根拠資料になることもあります。 - 就労への不安を軽減し、再発を防ぐ
生活リズムの回復や社会参加の練習を通じて、再就職に向けた自信を取り戻すことができます。 - 自分の「得意・不得意」を把握できる
支援員との面談や訓練を通じて、職場適性や課題を客観的に整理できます。
このように、手帳を持っていない段階から就労移行支援を活用することは、社会復帰に向けた有効な第一歩となります。
利用を検討する際のポイントとまとめ
就労移行支援は、障害者手帳がなくても利用できる柔軟な制度です。
手帳がなくても、「支援の必要性がある」と自治体に認められれば利用可能であり、医師の診断書がその重要な根拠になります。
まずは、自分の状態を整理し、主治医や自治体に相談することから始めましょう。
「手帳がないから利用できない」と思い込む必要はありません。支援を受けることで、就職に向けたステップがより明確になります。
よくある質問(FAQ)
Q1.障害者手帳がないと就労移行支援を受けられませんか?
いいえ。医師の診断書や意見書で「支援が必要」と認められれば、自治体の判断で利用が可能です。実際、手帳を持たずに通所している利用者も多くいます。
Q2.どんな診断があれば手帳なしでも利用できますか?
うつ病、双極性障害、統合失調症、ADHD、自閉スペクトラム症、適応障害などの精神疾患・発達障害が代表的です。診断名よりも「日常生活や就労に支障があるかどうか」が判断の基準になります。
Q3.手帳がない場合の手続きは複雑ですか?
医師の診断書を準備し、自治体に申請することで手続きが進みます。相談支援専門員が計画書を作成してくれるため、初めてでもサポートを受けながら進められます。
Q4.手帳を持たずに利用するデメリットはありますか?
障害者雇用枠への応募や、一部の税制優遇などの公的制度が利用できない場合があります。ただし、支援内容や訓練の質に違いはありません。
Q5.手帳を後から取得することは可能ですか?
はい。就労移行支援を利用している間に、医師の勧めや生活状況に応じて手帳を申請することもできます。通所記録や支援計画は、申請時の参考資料になることもあります。