うつ病で働けなくなった30代男性が見直した、仕事と心のバランスの話
「仕事が手につかない」「ただ椅子に座っているだけで精一杯」
――30代半ば、かつての私は、そんな状態で毎日を過ごしていました。
責任ある立場にもなり、会社や家族の期待を背負って働き続けていた中、突然すべてがうまくいかなくなりました。何をしても頭に入ってこない、感情の起伏が激しい、周囲の目ばかりが気になる。
診断は、うつ病でした。
「まさか自分が」という戸惑いと、「もう働けないのではないか」という恐怖。
この記事では、うつ病を経験した30代男性として、働けなくなった経緯、そこからの回復過程、そして仕事と心のバランスをどう見直していったかを、率直に綴っていきます。
同じように今、仕事ができずに悩んでいる方の道しるべとなれれば幸いです。

働けなくなったきっかけと、見逃していた初期サイン
私が最初に違和感を覚えたのは、細かいミスが連続したときでした。
資料の誤字、報告忘れ、スケジュール管理の漏れ――
それまで「几帳面で仕事が早い」と評価されていた自分には考えられないようなミスです。
そのうち、朝起きるのがつらくなり、職場での会話にもほとんど反応できなくなっていきました。焦燥感と無力感が交互に襲ってきて、最終的には通勤電車の中で過呼吸を起こし、そのまま病院を受診しました。
診断結果は「うつ病(中等度)」。
今振り返ると、もっと早い段階で気づけたサインはいくつもありました。
- 休日も疲労が抜けない
- 他人の言葉を過剰に気にするようになった
- 頭がぼんやりして、簡単な判断すら難しくなる
- 「とにかく眠っていたい」という欲求が強くなった
忙しさと責任感で、その異変を「気のせい」と済ませてしまっていたのです。
「仕事ができない自分」を受け入れるまでの葛藤
医師から「しばらく休養が必要です」と言われたとき、正直なところ安堵よりも罪悪感が強くありました。
職場に迷惑がかかる、キャリアに傷がつく、何より「働けない自分」に価値がないとすら思っていました。
これまで、「仕事をしてこそ一人前」という価値観のもとで生きてきた私にとって、働けない自分を受け入れることは簡単なことではありませんでした。
社会から取り残されていく不安。
家族に申し訳ないという気持ち。
「今後どうやって生きていくのか」という漠然とした恐怖。
しかし、同時にこうも思いました。
「このまま無理をしていたら、完全に壊れていたかもしれない」と。
その実感が、「まずは休むことから始めよう」という気持ちを支えてくれました。
回復に向けて実践したことと感じた変化
回復の過程において、私が意識したのは「日常を取り戻す」ということでした。
最初から仕事のことを考えるのではなく、まずは以下のような基本的な行動を安定させることに集中しました。
- 朝起きて、太陽の光を浴びる
- 食事の時間を整える
- 無理のない範囲で散歩など軽い運動を取り入れる
- 一日一回、外とつながる(家族との会話、LINE返信など)
これらを続けていく中で、少しずつ「自分の中の静けさ」が戻ってくる感覚がありました。
焦りは当然ありました。
「いつまでこんな生活をしているのか」と思う日もありました。
でも、目の前の“できていること”を確認することで、「自分は少しずつ前に進んでいる」と実感できるようになったのです。
仕事と心のバランスを見直すという発想
うつ病を経験して、最も大きく変わったのは「仕事の位置づけ」に対する考え方でした。
以前の私は、仕事を最優先にしていました。
多少無理をしてでも結果を出し、評価されることに価値を感じていたのです。
ですが、うつ病を経て、仕事も人生の一部でしかないということをようやく理解しました。
- 自分の体調に合った働き方
- 無理のない業務量
- 信頼できる人間関係
- プライベートの時間を確保すること
これらが揃ってこそ、仕事と心のバランスは保てるのだと思います。
また、仕事を「成果」ではなく、「自分らしさを活かす場」として捉えるようになったことで、過度なプレッシャーから解放されたのも大きな変化でした。
再び働くための土台をどう整えていくか
再び仕事に向き合うにあたって、私が意識したのは次の3つです。
- 復職前に自分の状態を見極める
回復には波があります。生活リズムが整っているか、人と話すことに強いストレスを感じないか、体調変化に気づけるか。この3点を特に重視しました。 - 段階的に負荷をかけていく
いきなりフルタイムで働くのではなく、短時間の業務やシミュレーションを通じて、少しずつ社会との接点を戻していきました。 - 困ったときに頼れる人や場所を確保する
孤立すると不安は倍増します。家族、医師、外部の相談機関など、自分の現状を共有できる存在を持つことは不可欠でした。
うつ病を経験したからこそ、自分に合った環境づくりや働き方の選択に慎重になることができました。
働けなくなったことが、学びに変わるまで
「うつ病で働けなくなったことは、人生の敗北ではないか」
最初はそんなふうに思っていました。
けれど今では、「あの経験があったからこそ、自分を見直すことができた」と感じています。
働き方は一つではありません。
人との距離の取り方、成果の出し方、休み方、すべてにおいて「自分なり」があっていい。
大切なのは、心の声に耳を傾けることです。
無理をしない、比べない、必要なときには休む。
そのすべてが、「長く働き続ける」ために欠かせない姿勢なのだと、今は思います。
※この体験談はフィクションですが、実態に近いストーリーを選出しました。
【セルフチェック】こんなときは「休む」サインかも
心が限界を超える前に、自分のサインに気づいてあげることも大切です。
以下に当てはまるものが多ければ、少し立ち止まってもいい時期かもしれません。
□ 毎朝、仕事のことを考えると動悸や涙が出る
□ 仕事中にぼーっとしてしまうことが増えた
□ 何をしても集中できず、達成感を感じられない
□ 休んでも疲れが取れない
□ 人と話すことがしんどいと感じる
□ 食欲や睡眠が大きく乱れている
□ 「消えてしまいたい」と思う瞬間がある
一つでも当てはまったら、自分に問いかけてみてください。
「今の私は、本当に無理をしていない?」と。
よくある質問(FAQ)
Q. 見学に行ったら、そのまま通わなければいけませんか?
A. いいえ、大丈夫です。見学だけでも問題ありません。無理に通うことを勧めることはありませんので、安心してご参加ください。
Q. まだ復職を決めていない段階でも相談できますか?
A. はい、もちろんです。復職を迷っている方や、これから働き方を考えたい方のご相談も大歓迎です。あなたのペースを大切にしながら一緒に考えていきます。
Q. 見学には何を持って行けばいいですか?
A. 特別な持ち物は必要ありません。気になることをメモしてお持ちいただいたり、リラックスできる服装でお越しいただければ大丈夫です。
Q. どんな人たちが利用していますか?
A. うつ病を経験された方、発達障害をお持ちの方、社会復帰に不安を感じている方など、さまざまな背景を持った方が、それぞれのペースで利用されています。
Q. 家族や友人と一緒に見学に行ってもいいですか?
A. はい、ご家族やご友人と一緒に見学していただくことも可能です。ひとりで不安な場合は、ぜひ大切な方と一緒にお越しください。